
2院で「異常なし」、それでも痛むときに考えたいこと
左上の奥歯が2週間鈍く痛む。けれどレントゲンと視診では何も見つからない——そんな経験をお持ちの方は少なくありません。歯の痛みは、歯そのもの以外が原因で起こることも報告されています。ここでは考えられる原因の整理と、次の受診先を選ぶ目安、受診前の準備をまとめました。
この記事の要点まとめ
- 歯に異常がない場合も筋肉や神経、副鼻腔など歯以外の要因が痛みの背景にあることがあります。
- 通常の検査では捉えにくい微細なヒビや初期症状もあり、三次元検査等による確認が役立ちます。
- 痛む時間帯やこれまでの検査結果を整理して持参すると、次の対応や他科連携の検討がスムーズです。
「異常なし」と診断されても痛みが続く場合に考えられる原因
歯やその周囲の組織に明らかな原因が見当たらないのに歯が痛む状態は「非歯原性歯痛」と呼ばれ、筋肉由来・神経由来・副鼻腔由来など複数のグループに分類されることが専門的な文献で整理されています4。痛みの正体が歯以外にある可能性を含めて考える段階にある、と受け取っていただくのが実際に近いです。
筋肉のこわばりからくる痛み(食いしばり・歯ぎしりとの関連)
咬筋や側頭筋にこわばった部分ができると、その痛みが離れた歯に響くように感じられることがあります。日中の無意識な食いしばりや就寝中の歯ぎしりが続くと、筋肉は休む時間を失います。朝起きた直後に痛みが強い、夕方になるほど重くなる、あごの横を押すと歯に痛みが飛ぶ——こうした特徴があれば、筋・筋膜性の痛みを考える手がかりになります4。
神経の痛みが歯に伝わるケース(三叉神経痛など)
顔面の感覚を担う三叉神経の経路に問題が生じると、歯が痛いという形で症状が出ることもあります。三叉神経痛では、洗顔や歯磨き、風が当たるといった軽い刺激で電気が走るような鋭い痛みが数秒続き、いったん収まるという波が見られます。帯状疱疹のあとに神経の痛みが残る場合もあり、鈍い持続痛とは性質が異なります4。
副鼻腔炎など耳鼻科領域から伝わる痛み
上あごの奥歯の根は、上顎洞という空洞と薄い骨を隔てて隣り合っています。副鼻腔炎や上顎洞炎で内部に炎症が起きると、複数の奥歯がまとめて重く痛む、下を向くと響く、鼻づまりや頬の圧迫感を伴うといった形で現れることがあります2。風邪や花粉の時期と重なっていないか、振り返ってみてください。
ストレスと痛みの関係についての誤解を整理する
「ストレスでしょう」と片づけられるのではと不安に感じる方は多いものです。確かに心理的な負荷は痛みの感じ方に影響しますが、それは筋肉・神経・耳鼻科領域といった他の要因を順に検討したうえで残る選択肢であり、最初に当てる説明ではありません4。原因の絞り込みには、痛みの性質と経過を丁寧に聞き取る時間が必要になります。
レントゲンや視診では見つけにくい歯の異常
一方で、歯そのものに原因がありながら通常の検査では像として現れにくい状態もあります。「見つからなかった」は「存在しない」と同義ではないという点が、ここでの要点です。
目に見えにくい歯のヒビ(歯根破折)の特徴
歯の根に細いヒビが入っても、破断面がずれていない初期の段階では二次元のレントゲンに写りにくいことがあります。噛んだ瞬間だけ鋭く痛む、硬いものを避けるようになった、特定の一本を指で押すと響く——こうした訴えは歯根破折を疑う材料になります。ヒビから細菌が入り込むと周囲の骨に変化が出て、ようやく画像で確認できるようになる場合もあります。
歯ぐきの炎症が軽度で写りにくいケース
歯周組織の変化は、初期には歯ぐきの色や形のわずかな違いとしてしか現れません。歯周病は自覚症状が乏しいまま進むことがあるため、痛みの部位に限らず歯周ポケットの深さを測る検査が判断の手がかりになります4。詰め物の下で進んだむし歯も、金属が画像に白く写ることで背後が見えにくくなる場合があります1。
レントゲンとCT・マイクロスコープで分かることの違い
通常のレントゲンは、立体である歯や骨を一方向から重ねて写した平面像です。歯科用CTでは対象を三次元的に把握できるため、根の枝分かれや骨の吸収範囲、上顎洞との位置関係などを別の角度から確認しやすくなります。マイクロスコープは視野を拡大して観察する装置で、肉眼では判別しにくい歯面のヒビや、歯と修復物の境目の状態を見る際に用いられます。ただし、どの機器を使っても原因が特定できない場合はあり、検査は可能性を一つずつ確かめていく手段だと捉えておくと落ち着いて臨めます。
「異常なし」と言われた後の受診先の見極め方
3件目をどこにするか迷ったときは、痛みの性質から「歯科領域で掘り下げるべきか、他科が向くか」をおおまかに切り分けると考えやすくなります。
歯科でさらに詳しい検査を検討する目安
痛む場所を自分で一本に指し示せる、噛んだときや叩いたときだけ痛む、冷たいものや温かいものに反応する、特定の歯の歯ぐきだけ押すと痛む。こうした場合は歯やその周囲に原因が残っている可能性があり、三次元の画像検査や拡大視野での確認、噛み合わせの点検といった追加の検査が選択肢になります1。過去の治療歴が多い歯ほど、確認する項目は増えます。
耳鼻咽喉科・神経内科・口腔顔面痛外来を検討する目安
複数の歯がまとまって痛む、鼻症状や頬の重さを伴う場合は耳鼻咽喉科。数秒の電撃的な痛みが繰り返される、顔の広い範囲に広がる場合は神経内科。原因の切り分けが難しく痛みが長引いているときは、大学病院などの口腔顔面痛を扱う外来やペインクリニックが検討先になります4。歯科と他科のどちらか一方に決めきらず、必要に応じて紹介を受けられる体制かどうかを相談時に確認しておくと動きやすくなります。
受診時に伝えると診断の助けになる痛みの記録内容
記憶に頼るより、メモが判断材料になります。痛み出した日付、痛む時間帯(起床時・夕方・夜間)、痛みの種類(鈍い・ズキズキ・電気が走る)、何をすると痛むか(噛む・冷たい物・うつむく・洗顔)、一回の痛みが続く長さ、鎮痛薬が効いたかどうか。加えて、これまで2院で受けた検査の内容と説明された結果も書き添えると、同じ検査を繰り返さずに次の段階へ進めます2。
受診までにできる対処法と避けたい行動
予約日までの数日をどう過ごすかで、痛みの波の大きさは変わってきます。
市販の鎮痛薬を使う際の考え方
市販の鎮痛薬は原因を取り除くものではなく、受診までの一時的な負担軽減として用いる位置づけです。用法・用量を守って使用することが基本です。連日飲み続けなければ日常が回らない状態なら、それ自体が受診を急ぐ目安。持病や服用中の薬がある方、妊娠中の方は、薬剤師や医師に確認してからの使用をおすすめします2。効いたか効かなかったかの記録も、痛みの性質を絞り込む情報になります。
冷やす・温めるをどう判断するか
拍動するような強い痛みや腫れ、熱感を伴うときは、頬の外側を保冷剤などでやさしく冷やすと落ち着きやすい傾向があります。逆に、あごの筋肉のこわばりが背景にある鈍い痛みでは、蒸しタオルなどで温めて筋肉を緩めるほうが合う場合も。腫れているのに温める、冷やして痛みが増すのに続ける、といった逆方向の対応は控えてください。判断がつかないときは、まず冷やして様子を見るのが無理のない選択です。
痛みを強めやすいNG行動
- 無意識の食いしばり:日中に上下の歯が触れていないか意識し、離す時間を作る
- 痛む側で硬いものを噛み続ける、ガムを長時間噛む
- 気になって舌や指で繰り返し触る、爪楊枝で強く探る
- 睡眠不足や長時間の同じ姿勢(首肩の緊張が痛みに影響します)1
- 自己判断で抗菌薬を残り物から飲む
痛みが急に強まった、頬や目の下が腫れてきた、口が開きにくい、発熱した——こうした変化があれば、予約日を待たずに連絡して受診時期を相談してください。
都島区・大阪市から通いやすい京橋オレンジ歯科クリニックの検査と予約方法

大阪市都島区エリアからの通いやすさと通院の動線
原因が絞り込めていない痛みは、一度で終わらず複数回の確認が必要になることもあります。通院を続けやすいかどうかは、医療機関を選ぶ際に考慮される点のひとつです。当院は大阪市都島区にあり、京阪京橋・JR京橋・地下鉄鶴見緑地線の各駅から徒歩圏内です。
CT・マイクロスコープを使った検査の流れ
歯科用CTやマイクロスコープ、口腔内スキャナーなどの設備を用いて、お口の状態を細部まで確認したうえで治療方針を検討することは一般的な流れです。原因のはっきりしない痛みでは、①問診で痛みの性質と経過を伺う、②口腔内の診査と歯周ポケットの検査、③必要に応じた画像検査、④拡大視野での歯面や修復物の確認、という順に情報を重ねていきます。歯科領域以外の要因が疑われる場合は、医科との連携を視野に入れた説明が行われることもあります。なお、検査を尽くしても原因の特定に至らないことはあり、その場合の見通しも含めて説明されることが望まれます。
WEB予約・電話予約の手順と初診時に準備するもの
ご予約はWEBまたはお電話から行うことができます。ご希望日時を選ぶ際に症状の欄へ「他院で異常なしと言われた歯の痛み」などと書き添えておくと、初診時の受付がスムーズになります。当日は保険証(またはマイナ保険証)、服用中のお薬の情報、前述の痛みの記録、これまでに受けた検査結果や説明のメモをお持ちください。
なお、原因の精査そのものは保険診療の範囲で行われることが一般的ですが、その後にセラミックなどの自由診療(公的医療保険が適用されない治療)を選択する場合、被せ物は数万円台から20万円程度まで幅があるとされています。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。自由診療には、素材によるアレルギー反応、装着後の痛みや炎症、修復物の破損・脱離などのリスク・副作用が生じる可能性があります。
よくある質問
Q. 歯に異常がないのに痛むのはなぜですか?
A. 歯やその周囲に原因が見当たらないのに歯痛を感じる状態は「非歯原性歯痛」として整理されており、あごの筋肉のこわばり、三叉神経などの神経由来の痛み、上顎洞の炎症、噛み合わせの負担などが背景として挙げられます。原因が一つに限らないこともあるため、痛みの性質と経過を手がかりに順に絞り込んでいきます。
Q. 歯科で「パコる」とはどういう意味ですか?
A. 歯科の正式な用語ではなく、患者様の間で使われる言い方です。器具で歯を軽く叩いて反応を確かめる打診検査の音や、詰め物を外すときの感触を指して用いられることがあります。診察でわかりにくい表現が出てきたときは、遠慮なくその場でお尋ねください。
Q. 歯が痛いときに避けたい行動はありますか?
A. 痛む側で硬いものを噛み続ける、気になって舌や爪楊枝で繰り返し触る、無意識に食いしばる、といった行動は痛みを強めやすいものです。腫れや熱感があるのに温める対応も控えてください。以前処方された抗菌薬の残りを自己判断で服用することもおすすめできません。
Q. むし歯が進んでいるサインにはどんなものがありますか?
A. 何もしていないのに脈打つように痛む、痛みが夜間に強まる、歯ぐきが腫れる、噛むと響く、いったん痛みが消えたあと再び強い痛みが出る、といった変化は歯の内部に炎症が及んでいる可能性を示します。自然に治まったように見えても進行している場合があるため、早めの受診をご検討ください。
Q. 3件目の受診でも「異常なし」と言われそうで不安です。
A. 同じ結果になる可能性はゼロではありません。ただ、これまでの検査内容と説明された結果を持参していただければ、確認済みの項目を飛ばして別の角度から検討できます。歯科領域で見当がつかない場合に、耳鼻咽喉科や神経内科、口腔顔面痛を扱う外来など次の相談先を一緒に考えることもできます。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
3. 日本臨床歯周病学会 https://www.perio.jp/
4. Yatani H, Komiyama O, Matsuka Y et al. Systematic review and recommendations for nonodontogenic toothache. Journal of oral rehabilitation. 2014. PMID: 25040436 / DOI: 10.1111/joor.12208
2015年 大阪歯科大学附属病院にて臨床研修終了
2016年 大阪歯科大学大学院 歯学研究科入学
2020年 大阪歯科大学大学院 歯学研究科卒業
歯科保存学専攻学位取得
2020年 大阪歯科大学附属病院にて勤務
2021年 大阪府一般歯科勤務 大阪府地域医療に尽力
2023年 京橋オレンジ歯科クリニック 院長就任
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本矯正歯科学会
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