京橋オレンジ歯科クリニックでは、主に、中程度~重度の歯周病で歯周組織を失ってしまった方を対象に、以下の2種類の再生療法を行っています。
≪当院の再生療法≫
- リグロス(保険診療)
- エムドゲイン(自由診療(自費))
前回のブログでは、再生療法の概容をお伝えさせていただきました。
今回は、当院で実施している上記2種類の再生療法について、それぞれの違い・特徴をより詳しくご説明いたします。
目次
■リグロス エムドゲインの違いは?
◎どちらも、歯周組織の再生をうながす点は同じです
リグロス、エムドゲイン、どのような違いがあるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
リグロスとエムドゲインは、どちらも、歯周組織や歯のセメント質の再生をうながす点は同じです。
[リグロスにより、再生・改善をうながす効果を期待できる歯周組織・歯の部位]
- 歯根膜
- 顎の骨(歯槽骨:歯を支えている顎の骨)
- 歯ぐき
- 歯のセメント質
- 歯周組織の血管(血管の新生を強くうながす)
[エムドゲインにより、再生・改善をうながす効果を期待できる歯周組織・歯の部位]
- 歯根膜
- 顎の骨(歯槽骨:歯を支えている顎の骨)
- 歯ぐき
- 歯のセメント質
- 歯周組織の血管
上記2種類の再生療法のうち、リグロスは、血管の新生を強くうながす作用がある点が特徴です。リグロスは血管の新生を強くうながす作用により、歯ぐきの再生・改善に対する効果を期待できることが研究によって報告されています(※)。
(※)科研製薬株式会社「リグロス 総合製品概要」より引用。
{下がった歯ぐきの高さを大きく回復したいときは、別途、歯ぐきの移植手術が必要になることがあります}
リグロス、エムドゲインは、歯ぐきの状態を再生・改善する効果を期待できます。
ただし、歯ぐきの退縮が大きい、または、歯ぐきの退縮に加えて歯のすき間が広い(ブラックトライアングル:前歯の下部に▲のすき間がある)ケースにおいては、リグロス、エムドゲインによる再生療法のみでは、失われてしまった歯ぐきの高さを十分に回復できない場合も。
上記の理由により、下がった歯ぐきの高さを大きく回復したいときは、再生療法に加え、別途、歯ぐきの移植手術が必要になることがあります。
■用いる再生剤の違い
◎リグロスはヒト由来、エムドゲインはブタの歯胚由来の成分を使用
リグロス、エムドゲインはそれぞれ、用いる再生剤が異なります。
[再生剤(成長因子)の種類]
- リグロス·········· bFGF(ヒト由来のタンパク質)
- エムドゲイン······· エナメルマトリックス(ブタの歯胚由来のタンパク質)
◎がん患者の方(主に口腔がんの患者の方)にリグロスは使えません
bFGFにより、血管の新生や細胞の分裂・増殖をうながす作用を持つ、リグロス。血管の新生や細胞の分裂・増殖をうながす作用があるため、がん患者の方にリグロスは使えません。
がんは、何らかの原因で体内の組織ががん化する疾患です。がん患者の方(特に口腔がんの患者の方)にリグロスを用いると、がん細胞の分裂・増殖を促進してしまうおそれがあります。
■再生療法としての歴史の違い(保険or自由診療の違い)
◎リグロスは保険での治療が可能、エムドゲインは自由診療
リグロスは保険で治療を受けられます。
エムドゲインは自由診療です。
保険・自費の違いのほか、両者のあいだには、再生療法として使われてきた歴史においても、いくつかの相違点があります。
リグロスは2016年から歯科での使用(保険適応)を開始
リグロスは元々、やけどなどの皮膚損傷に対する皮膚の再生を主な目的としていました。日本でリグロスは、医科分野にて、フィブラストスプレーの名前で2001年から使用されています。
開発後、日本では長い間、フィブラストスプレーとして、医科分野で主に皮膚再生の治療に用いられていましたが、2016年、歯科用の再生剤としてリグロスが発売。発売年である2016年には、歯科でのリグロスの使用が保険適応になりました。
エムドゲインと比べると歴史が浅いリグロスですが、血管の新生を強くうながす作用を持つ点など、リグロスならではの特徴も。
現在、日本国内では、エムドゲインに加え、再生療法の選択肢の一つとしてリグロスを採用する歯科医院が増えています。
エムドゲインは1995年に開発され、日本では1998年に使用を開始
エムドゲインは1995年にスウェーデンで発売をスタートました。日本では2016年から歯科での使用が始まったリグロスに対し、エムドゲインは90年代中頃から、主にヨーロッパを中心に歯科の再生療法で使われてきた歴史を持ちます。
日本では、1998年に厚生労働省がエムドゲイン(旧タイプの液体版)を認可。2002年には改良版のエムドゲインゲルになり(施術箇所に、より留まりやすくなった)、現在まで、エムドゲインゲルは自由診療にて、歯科の再生療法で用いられています。
■適応可能な症例の違い
◎どちらも、適応可能な症例はほぼ同じです
リグロスの再生剤は、液状です。
エムドゲインの再生剤は、液体に近いゲル状です。
施術箇所への留まりやすさの点では、液状であるリグロスの再生剤と比べて、ゲル状であるエムドゲインの再生剤の方が、幾分、患部に留まりやすくなっています。
ゲル状で幾分、患部に留まりやすいエムドゲインゲルですが、ゲルは液体に近い物質のため、必ずしも患部に留まる訳ではありません。
再生療法においては、リグロス、エムドゲイン、どちらも液状(エムドゲインは液体に近いゲル)物質のため、適応できるのは、主に以下のような症例になります。
[リグロス、エムドゲインが適応可能な症例]
・顎の骨が垂直方向(縦方向)に失われている(垂直性骨欠損)
顎の骨が水平方向(横方向)に広く失われている、水平性骨欠損においては、リグロス、エムドゲインによる再生療法の適応は難しいです。
[リグロス、エムドゲインの適応が難しいケース]
・顎の骨が水平方向(横方向)に失われている(水平性骨欠損)(※)
(※)GBRなどの骨造成法や骨移植により、水平性骨
欠損の改善にアプローチできる可能性があります。
【歯ぐきが下がり顎の骨が失われていても、最後まで歯を残すことを諦めないでください】
今回は、当院で行っているリグロス、エムドゲインによる再生療法について、ご紹介をさせていただきました。
再生療法が登場するまでは、中程度~重度の歯周病で失われた歯ぐきや顎の骨の回復は難しく、抜歯せざるを得ないケースが多々ありました。
現在は、リグロス、エムドゲインをはじめとする再生療法が普及。以前と比べて、中程度~重度の歯周病の方に対し、歯を残すためのより効果的なアプローチが可能になっています。
歯ぐきが下がり顎の骨が失われていても、最後まで歯を残すことを諦めないでください。歯周組織の状態にもよりますが、リグロス、エムドゲインの再生療法を含め、歯周外科治療を行うことで抜歯を回避できる可能性があります。
– 歯周病治療の経験が豊富な歯科医師による歯周病治療を行っています –
京橋オレンジ歯科クリニックでは、日本歯周病学会に在籍する、歯周病治療の経験が豊富な歯科医師による歯周病治療を行っています。
[当院の歯周病治療の内容]
- 歯のクリーニング
- スケーリング(歯石取り)
- SRP(スケーリング・ルートプレーニング(歯の根面の歯石取り))
- 再生療法(リグロス、エムドゲイン)
- 歯周外科処置(歯ぐきの切開による歯の根面の歯石取り&クリーニング、歯周組織の再生)
歯ぐきの腫れなど、歯周組織の違和感や異常がある方、定期的なメンテナンスで歯周病の進行を抑えたい方は当院までお気軽にご相談ください。
初診では、歯科医師が患者様のお口の状態を診査し、適切な治療方法をご提案させていただきます。