「歯医者は歯が痛くなったら行くところでしょ 今は歯が痛くないから平気だよ」
「毎日ちゃんと歯を磨いているから、歯医者には行かなくても大丈夫」
「でも…毎日、歯を磨いているのに、むし歯や歯周病になるのはなぜなんだろう?」
むし歯・歯周病の進行を抑え、お口の健康を守るためにはご自身で行う毎日の歯みがきと歯間清掃がケアの基本となります。
しかし、ご自身で行う歯みがきだけでは歯についた歯垢や歯石は落とし切れません。落とし切れない歯垢や歯石が原因で口腔内の細菌が増え、むし歯・歯周病を発症することも。
効果的にむし歯・歯周病を予防するには、毎日のセルフケアに加えて定期的に歯科医院で予防処置を受けることが大切です。
今回は「海外と日本の予防意識の違い」および「歯医者で予防処置を受けることの大切さ」についてお話しします。
目次
■海外と日本の予防意識の違い
◎スウェーデンやアメリカなどの歯科先進国では予防処置の考え方が浸透しています
スウェーデンやアメリカなどの歯科先進国では、
「歯科医院はむし歯・歯周病を未然に防ぐために行くところ(予防処置を受けるために行くところ)」
という考え方が浸透しています。
スウェーデンでは大人の80~90%(子どもはほぼ100%)以上、アメリカでは国民全体の70%以上が予防処置のために歯科医院に通っているとされています。
海外の歯科先進国では「歯が痛くなってからでは遅い。むし歯や歯周病にならないよう(or進行しないよう)にふだんから歯科医院に通い、定期的に予防処置を受けておくことがベスト」という意識を多くの方が持っているのです。
◎以前と比べ、現在は日本にも徐々に予防意識が浸透しつつあります
「歯医者は歯が痛くなったら行くところ」という認識を持つ方がまだまだ多い日本。ただし、以前の昭和や平成中期までの時代と比べると、現在は日本にも徐々に予防意識が浸透しつつあります。
1990年代後半には歯科の定期検診受診率は2~6%と低く、まさに「歯医者は歯が痛くなったら行くところ」の時代でした(※1)。
2022年に行われた厚生労働省の調査では、過去1年間に歯科で定期検診を受けた方の割合が58%に向上しています(※2)
(※1)厚生労働省歯科疾患実態調査(令和4年)より引用。
(※2)保険福祉動向調査「歯科受診者数(主たる診療内容別)」(1999年)より引用。
58%という数値は全体の半数ほどであり、スウェーデンやアメリカなどの歯科先進国の70~90%という割合と比べるとまだまだ低いですが、それでも大きな進展と言えます。
日本人のむし歯・歯周病に対する予防意識が高まっている理由としては、「80歳までに20本以上の健康な歯を残そう」という目標(スローガン)をかかげる「8020運動」の普及や、日本社会の超高齢化に伴い、健康な歯を残すことの大切さ(ご自身の歯で噛める喜び)を認識するご高齢の方が増えたことが要因と考えられています。
■歯科医院で行う予防処置とは
◎お口の健康チェック、および、歯のクリーニングを行います
歯科医院で行う予防処置では、主に以下の2つ(+ご希望に合わせて3~5)を行います。
1.歯科医師によるお口の健康チェック(定期検診)
・歯・歯ぐき・顎の骨(歯槽骨)の状態確認
・むし歯・歯周病の有無の確認
2.歯科衛生士による歯のクリーニング
・PTC(保険)or PMTC(自費)による歯のクリーニング
・歯石取り(スケーリング、SRP(歯周ポケット内部の歯根面の歯石除去を含むスケーリング))
(むし歯が多いorご希望の場合)
3.歯みがき指導
4.フッ素塗布
5.シーラント(3~12歳のお子さまが対象)
1.定期検診により、むし歯・歯周病やお口の異常の早期発見・早期治療につながります
歯科医院の予防処置では歯科医師による定期検診を行います。
定期的に歯科医院で検診を受けることで、むし歯・歯周病や噛み合わせの乱れ、歯ぐきや顎の骨の異常など、お口の病気・お口の異常の早期発見・早期治療につながります。
2.プロフェッショナルが行う歯のクリーニングにより、むし歯・歯周病の予防効果を高められます
予防処置では歯科医師による定期検診のほか、歯科衛生士が歯のクリーニングを行います。
歯科衛生士は専門的な技術を学んだ歯のクリーニングのプロフェッショナルです。歯科衛生士が行うPTCやPMTCなどの歯のクリーニング、および、歯石取り(スケーリング、SRP)により、ご自身の歯みがきでは落とし切れないバイオフィルムや歯石を効率的に除去できます。
歯についたバイオフィルムや歯石を除去することでお口が清潔になると共に口腔内に細菌が棲み着きにくくなり、むし歯・歯周病の予防効果を高められます。
3.歯みがき指導により、正しいブラッシングの仕方を学べます
定期検診の際、むし歯が多かったり、歯垢・歯石がたくさん付着している場合は歯科衛生士による歯みがき指導を行うことがあります。
歯についた歯垢を効率よく落とすためには、正しい方法で行う毎日の歯みがきが欠かせません。誤った「自己流」のブラッシングで歯みがきをしている方は磨き残しが出やすいです。
歯科医院で歯みがき指導を受けることで正しいブラッシングの仕方を学ぶことができ、歯みがきの清掃効率UPにつながります。
4.5.フッ素塗布、シーラントにより、むし歯予防の効果を高められます
フッ素塗布とは、歯の再石灰化作用をうながし歯質を強化する働きを持つフッ素を歯のエナメル質に塗るむし歯予防処置です。フッ素塗布を受けることで歯質が強化され、むし歯予防の効果を高められます(※1)。
シーラントとは、奥歯の噛み合わせ面の溝や前歯の裏側の穴(盲孔:もうこう)にプラスチック樹脂のレジンを詰めるむし歯予防処置です。シーラントを受けることで奥歯の噛み合わせ面の溝や前歯の裏側の穴にむし歯菌などの細菌が入り込みにくくなり、むし歯予防の効果を高められます(※1)(※2)。
(※1)むし歯を防ぐためには、ご自身で行う毎日の歯みがき+歯間清掃、および、
歯科医院で受ける定期的な予防処置(定期検診+歯のクリーニング)が必須です。
(※2)シーラントは3~12歳のお子さまが対象です。
【セルフケアと歯科医院の予防処置でお口の健康を守りましょう】
歯はかけがえのない大切な存在です。
丈夫で健康な歯があるからこそ、肉や魚、野菜など、何でもしっかり噛んで食事を楽しめます。噛むことは認知症の予防にもつながります。
また、さまざまな食材をバランス良く摂取することは全身の健康を保つ基礎になります。
むし歯・歯周病などのお口の病気の進行を抑えるには、ご自身で行うセルフケアに加えて歯科医院で受ける定期的な予防処置が必要です。
大切な歯を守るため、毎日の歯みがき+歯間清掃によるセルフケアを欠かさずに行うと共に定期的に歯科医院で予防処置を受けましょう。
{予防処置を受ける頻度について}
予防処置(定期検診+歯のクリーニング)の頻度については、3ヶ月に1回を目安としています。ただし、患者様やお口の健康状態によっては1ヶ月に1回など、頻度が異なります。
予防処置の際はそれぞれの患者様のお口の状態を精査した上で、歯科医師が適切な通院頻度をご提案させていただきます。