「妊娠中、親知らずが痛い… むし歯?」
新しい命をお腹に宿す、妊娠期間。
つわりなど、妊娠中はつらい場面も多いかと思います。
つらい場面もある妊娠中ですが、特に気をつけていただきたいのが「妊娠中の親知らずのむし歯」です。
親知らずについては、これまでに当院のブログでも「抜く・抜かない?親知らず」「親知らずがない!?」のお話をさせていただきました。
今回は、「妊娠中に親知らずが痛む理由」および「妊娠中、親知らずは抜歯できる?」について、ご説明します。
目次
■妊娠中、親知らずのむし歯が原因で歯が痛むことがあります
◎ケア不足により、妊娠中はむし歯が進行しやすいです
妊娠中、比較的多く見られる歯の痛みとしては、「親知らずのむし歯」があります。
つわりなど、妊娠中は体調がすぐれないことが多く、「歯を磨く気にもならない…」という方も少なくありません。
体調がすぐれないことに加え、マタニティブルーなど、気分が落ち込み、歯磨きや身の回りのことをするのが面倒くさくなってしまうケースも。
上記の理由により、妊娠中はお口のケアが不足しがちになり、むし歯(特に親知らずのむし歯)が進行しやすくなる傾向が見られます。
◎お口のいちばん奥に歯があり、歯が磨きにくいことも、親知らずがむし歯になりやすい理由の一つ
歯科用語では親知らずを「8番(第3大臼歯)」と呼びます。8番、つまり、お口のいちばん奥にある歯が親知らずです。
お口のいちばん奥にあるため、親知らずは歯ブラシが届きにくく、むし歯になるケースが少なくありません。
■妊娠中、親知らずは抜歯できるの?
◎妊娠中は敏感な時期のため、親知らずの抜歯(麻酔注射を伴う歯科治療全般)は行えないことが多いです
妊娠中、親知らずのむし歯が痛むときは、主に以下の2つが対処法として考えられます。
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麻酔注射をして、親知らずのむし歯を削る(親知らずのむし歯治療)
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親知らずそのものを抜く(親知らずの抜歯)
妊娠さん以外に対しては、通常、上記の2つで対処できます。しかし、妊娠中は敏感な時期のため、妊婦さんには、親知らずの抜歯を含む、麻酔注射を伴う歯科治療全般を行えないことが多いです。
特に、以下の時期は、原則として、麻酔注射を伴う歯科治療全般を行えません。
[妊娠中、歯科治療に制限がかかる時期]
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妊娠初期(妊娠1~4ヶ月目)(お腹の中で赤ちゃんの身体が作られ始める時期)
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妊娠後期(妊娠8~10ヶ月目)(出産を間近に控え、お母さんのお腹がかなり大きくなっている時期)
基本的に、妊娠初期、および、妊娠後期は、親知らずのむし歯が痛んでも、歯科医院で行えるのは痛み止め(お腹の中の赤ちゃん&お母さんへの影響が少ないとされるカロナール系の痛み止めなど)の処方など、応急処置のみに限られます。
◎妊娠中期に限り、麻酔注射を伴う歯科治療(むし歯治療や普通抜歯)を行える場合があります
お腹の中の赤ちゃん&お母さんへの影響を考え、原則として、歯科医院での対処は応急処置のみに留まることが多い、妊娠初期・妊娠後期。
原則として、妊娠初期・妊娠後期は応急処置のみの対処になりますが、比較的安定した時期とされる妊娠中期(妊娠5~7ヶ月目)に限り、麻酔注射を伴う歯科治療(むし歯治療や普通抜歯(親知らずの普通抜歯を含む)など)を行える場合があります。
普通抜歯とは、歯ぐきを切開しない通常の抜歯です。
なお、妊娠中期であっても、親知らずが埋まっており歯ぐきの切開が必要な難抜歯は基本的に行えません。難抜歯が行えない理由は、麻酔注射の使用、外科的な処置など、お腹の中の赤ちゃん&お母さんへの負担が大きくなってしまうためです。
■まとめ
◎妊娠中の、妊婦さんへの親知らずのむし歯への対処方法
妊娠中(特に妊娠初期、妊娠後期)は、親知らずのむし歯が痛んでも、痛み止めなどの応急処置しかできない場合が多いです。
妊娠中期に限り、普通抜歯であれば親知らずを抜けるケースも(※)。
難抜歯、または、妊娠後期に入っている場合は、出産後に親知らずの抜歯を検討する形になります。
(※)お腹の中の赤ちゃん&お母さんへの影響を考え、
妊娠中期でも普通抜歯を避ける場合があります。
【妊娠中はできる範囲で歯をケアしましょう】
妊娠中はつわりなどでつらい場面も多いため、歯磨きをする気にならない、ということもあるかと思います。
つらい場合は、無理に歯を磨こうとせず、お口の中をゆすぐだけでもかまいません。とりあえずお口の中をゆすいでおき、体調が少しマシになったときに、歯を磨きましょう。歯磨きと併せ、できるときで良いので、フロスによる歯間清掃も忘れずに行ってください。
できる範囲でセルフケアを行うと共に、妊娠中は定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けることで、歯周病・むし歯の悪化を防ぎやすくなります。