「奥歯が抜けたままだけど、目立たないから放っておくかな… 痛くないし」
歯周病やむし歯、不慮の事故などが原因で歯を失ったとき、歯が抜けたままにしていませんでしょうか?
1本でも、歯が抜けた状態を放置するのはおすすめできません。
歯が抜けたまま放置していると、お口周りをはじめとして全身に悪影響がおよぶことも。
■歯が抜けたまま放置するリスク(起こり得る悪影響)
1.全体の歯でしっかり食べ物を噛みにくくなる
前歯を失うと、失った歯の付近の前歯で食べ物を噛みちぎりにくくなる・食べ物をかじりにくくなることが多いです。
奥歯を失うと、失った歯の付近の奥歯で食べ物をすり潰しにくくなることが多いです。
上記のように、歯が抜けたままだと、多くの場合、全体の歯でしっかり食べ物を噛みにくくなります。
2.全体の歯並び・噛み合わせが乱れやすくなる
歯が抜けたままにしていると、失った歯の空間に隣の歯が倒れてきてしまい、全体の歯並び・噛み合わせが乱れることがあります。
隣の歯が倒れてくることがあるのに加え、歯が抜けたままにしている方は、残っている歯ばかりで食べ物を噛みがちです。左右どちらか、または前歯・奥歯どちらかなど、残っている歯ばかりで食べ物を噛んでいるとアンバランスな力がかかりやすくなります。
アンバラスな力がかかり続けた結果、顎周りの筋肉・顎の骨格のバランスが乱れてしまい、歯の噛み合わせが乱れることも。
抜けた歯の部分に噛み合わせの歯が伸びてきてしまい、伸びた歯が原因で全体の歯並び・噛み合わせが乱れるケースもあります。
3.糖質中心の食生活に偏りがちになる(肥満や糖尿病のリスクが高まりやすい)
前述のように、歯が抜けたままにしている方は、全体の歯でしっかり食べ物を噛みにくくなることが多いです。
全体の歯でしっかり食べ物を噛めないと、あまり噛まずに済むやわらかい麺類、カレーやシチュー、プリン・ゼリー、ジュースやお酒などの糖質中心の食生活に偏る傾向が見られます。
糖質中心の食生活はカロリー過多になりがちなため、肥満や糖尿病のリスクが高まりやすいです。
4.発音しにくくなる場合がある
前歯を失うと、失った前歯の部分から空気が漏れてしまい「サ行・タ行」の発音がしにくくなる場合があります。サ行・タ行に加え、前歯の抜け方によっては「ナ行・ラ行」の発音に支障が出ることも。
5.噛み合わせの乱れによって頭痛や肩こり、背骨や骨盤のゆがみなど、全身への悪影響が生じることがある
噛む機能は全身の筋肉・骨格と密接に関わっています。噛み合わせが乱れると顎周りの筋肉・顎の骨格のバランスが乱れ、顎から首→背中→骨盤→足、という様に全身の筋肉・骨格のバランスのゆがみをひき起こすケースも。
6.見た目の問題が起きやすい
歯を抜けたままにしていると、口元の見た目に問題が起きやすいです。特に、前歯の欠損は目立ちやすく、恥ずかしさから人前でお口を開けられなくなってしまうケースも。
7.噛む刺激が不足し、認知症を発症しやすくなる
20本以上歯が残っている方と比べて、残っている歯が少ない方は噛む刺激の不足により約2倍、認知症を発症しやすいことが研究によって報告されています(※)。
(※)神奈川歯科大学大学院 山本龍生教授
「歯科から考える認知症予防への貢献」(2017年)
より引用。
■前歯と奥歯 抜けると悪影響が起きやすいのは、どっち?
◎対になる奥歯を失うと、前歯に負担がかかって全体の歯を失いやすくなります
どの歯も大切ですが、特に気をつけていただきたいのは奥歯の喪失です。
奥歯は上下で対になる形で噛み合い(上の奥歯一歯につき、下の奥歯二歯で噛み合うのが正常な形)、噛んだときのストッパーの役割を果たしています。
ストッパーの役割を果たしている奥歯。奥歯を失うと、歯で噛んだときのストッパー(バーティカルストップ)の作用が薄れ、前歯に負担がかかります。奥歯を失ったことが原因で前歯に負担がかかり、噛んだときに下の前歯が上の前歯を突き上げる形になってしまうのです。
前歯に負担がかかると、前歯を取り囲む歯ぐきや前歯を支えている歯槽骨(歯周組織)がダメージを受けてしまい、前歯がグラグラになるケースが多く見られます。
奥歯を失う→バーティカルストップの作用が薄れ、ダメージを受けて前歯も失う→前歯が少なくなったことで奥歯で噛むようになり、奥歯に負担がかかる→負担によってダメージを受け、奥歯を失う→前歯を失う… の悪循環により、全体の歯を失うケースもあります。
【毎日のセルフケア+歯科医院の定期メンテナンスで歯の健康を守りましょう】
歯を失ったときはインプラント・ブリッジ・入れ歯などの補綴治療で補えますが、天然の歯に勝る人工歯はありません。
歯の健康を守るために、毎日のセルフケアと併せて、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けましょう。