
検診が空いた今、まず確かめたいこと
繁忙期と家庭の用事が重なり、気づけばインプラントの検診から約8か月が過ぎていた。保証書を見返して、思わず手が止まった方もいらっしゃるでしょう。検診を一度空けただけで、保証が使えなくなるとは限りません。扱いは契約内容によって異なります。この記事では、保証書で確認する箇所、症状がなくても受診したい理由、検診を再開する手順をご説明いたします。
この記事の要点まとめ
- 検診が8か月空いた場合の保証の扱いは契約ごとに異なるため、保証書と受診履歴を用意して医院へ確認しましょう。
- 症状がなくても、歯ぐきや噛み合わせなどに変化がないか、検診で確認する機会になります。
- 予約時に前回の受診日や気になる症状を伝え、保証条件と今後の検診間隔を相談しながら受診を再開しましょう。
定期検診を8か月空けたら、インプラントの保証はどうなる?

一度休んだだけで保証対象外とは限らない
8か月空いたという事実だけで、保証の可否は決まりません。保証の条件は医院ごとの契約で定められています。受診間隔のほかに、指定されたメンテナンスを受けているか、ナイトガードの使用など生活上の指示を守っているか、といった項目が組み合わさっているのが一般的です。
ご自身で「もう失効した」と結論を出す前に、受診履歴を伝えたうえで契約先の医院に確認することをおすすめいたします。
保証書で見るのは受診期限・指定処置・免責事項
保証書を開いたら、次の順に目を通してください。
- 受診の間隔と、その起算日(治療完了日か、前回の検診日か)
- 受診先の指定(治療を受けた医院に限られるか)
- 必要な処置(清掃・点検など、指定メンテナンスの内容)
- 免責事項(日常生活での破損、歯ぎしり、周囲の病気の扱い)
- 申請するときの連絡先と必要書類
当院の保証書でも、定期検診の受診に加え、全身の病気にかかった際のご報告や就寝時のナイトガード着用などを条件として記載しております。
受診を再開すれば保証も戻る?医院に聞くこと
受診を再開した場合に保証がどう扱われるかは、契約によって異なります。電話や受付で尋ねるときは、次の3点に絞ると話がまとまりやすくなります。
「空いた期間はどう扱われますか」「再開後に満たす条件は何ですか」「他院で受けた検診の記録は認められますか」。答えはメモに残しておくと、のちの申請時に役立ちます。
保証が使えない場合の修理・再治療はどう進む?
保証の有無にかかわらず、最初に行うのは不具合の原因を診ることです。被せ物の破損か、ネジの緩みか、周囲の歯ぐきや骨の変化かによって、必要な処置も費用も変わってきます。
インプラントは自由診療(公的医療保険が適用されない治療)のため、保証外の修理や再治療では費用のご負担が生じます。処置ごとの一般的な目安は次のとおりです。
- ネジの締め直し・噛み合わせの調整:数千円〜1万円程度。通院は1〜2回程度です。
- 被せ物(上部構造)の作り直し:1本あたり10万〜20万円程度。型取りから装着まで通院2〜4回、期間は数週間程度です。
- インプラント周囲炎の治療:清掃を中心とした処置で数千円〜数万円程度、歯ぐきを開く外科的な処置を伴う場合は数万〜十数万円程度。通院回数は炎症の程度によって異なります。
- インプラントの撤去と再埋入:1本あたり30万〜50万円程度(検査・手術・被せ物を含む総額の目安)。骨が足りず骨を補う処置(骨造成)が必要な場合は、さらに5万〜10万円程度加わることがあります。治療期間は3〜6か月程度、通院は5〜6回程度が目安です。
これらは複数の医療機関の公開価格などから見た一般的な相場であり、当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。
修理や再治療には、次のようなリスク・副作用が起こることがあります。
- 外科的な処置のあとの痛み・腫れ・出血・内出血
- 被せ物の交換や調整のあとに、噛み合わせの違和感が残ること
- 再埋入したインプラントが骨と結合せず、再度の処置が必要になること
- 下あごの神経の近くを処置した場合の、唇やあごのしびれ
- 炎症の治療後に歯ぐきが下がり、見た目が変わったり、しみたりすること
もうひとつ混同しやすいのが、部品に対するメーカー保証と、医院独自の保証です。不具合がどちらの対象になるのか、あわせて医院に確かめてください。
ポイント
保証の扱いは受診回数だけで決まるものではありません。保証書の条件を確かめ、受診履歴を伝えて医院に確認してください。
症状がなくても、空いた期間の変化を検診で確かめる

インプラントの周りに起こる炎症で、痛みが出るかどうかには個人差があります。今は何も感じていなくても、空いた8か月のあいだに変化がなかったかを検診で確かめておく意味があります。
見た目に変わりがなくても、歯ぐきや噛み合わせを確認
インプラント周囲炎(インプラントの周りの歯ぐきや骨に起こる炎症)には、歯周病にかかったことがあるか、清掃の状態、喫煙などが関わると報告されています1。
検診では、インプラント周囲の歯ぐき、汚れの残りやすさ、噛み合わせの変化を確認いたします。残っているご自身の歯も同時に診るのは、歯周病の既往や現在の歯周病がインプラント周囲炎のリスク因子と報告されているためです1。どこまで詳しく調べるかは、お口の状態に応じて決めております。
腫れ・出血・噛むと痛いときは予約時に伝える
次のような変化に心当たりがあれば、検診の時期を待たずにご相談ください。
- 歯ぐきが腫れている、歯磨きで血が出る
- インプラントの歯がぐらつく、浮いた感じがする
- 噛むと痛い、なんとなく違和感が続く
原因はご自身で判断せず、「どの歯か」「いつごろからか」を予約時に伝えていただくと、必要な検査を準備しやすくなります。定期的な管理は、インプラント周囲の病気を予防するうえで役立つ可能性があると報告されています2。
次の検診までの歯磨きと受診間隔の決め方
ふだんの歯磨きは、これまでどおり続けてください。磨きにくいと感じる場所があれば、受診時にお伝えいただければ、清掃の道具や当て方を一緒に見直します。
定期的な管理を続けた人では、インプラント周囲の病気が少ない傾向が系統的レビューで示されています23。ただし、適した間隔に誰にでも当てはまる答えはありません。治療歴、お口の状態、保証の条件を踏まえて、医院と相談して決めていきます。
定期検診はインプラントを長く使うための共同作業
インプラントをどのくらい使えるかには個人差があり、検診を受けることだけで結果が決まるわけではありません。毎日のセルフケアと、医院での点検の両方が関わってきます3。
当院に限らず、術後の定期的な清掃と点検は、お口の状態を確認する機会です。歯科衛生士が前回の記録と比べ、変化を確かめることもあります。インプラントの状態を見守るには、日々の清掃と定期的な点検の両方が大切です。
ポイント
痛みがないことは、変化がないことと同じではありません。保証の確認とは切り分けて、お口の点検を再開しましょう。
保証書を用意して検診を再開する手順
連絡をためらう必要はありません。保証書と受診の記録を手元に置き、空いた期間をそのまま伝えていただければ、保証の確認とお口の点検を同時に進められます。
予約時は前回の受診日と気になる変化を伝える
保証書のほかに、診察券や領収書など、前回の受診日が分かるものをご用意ください。予約の際は、次のように伝えていただくと話がスムーズです。
「インプラントの定期検診が約8か月空いてしまいました。保証の条件もあわせて確認したいです。今のところ痛みはありません。」
間が空いたことを申し訳なく思う必要はありません。検診では今の状態をご説明し、納得いただいたうえで次の対応を決めてまいります。
検診を続けるための予約の取り方
当院は京橋駅片町口から徒歩1分です。生活の予定に合わせて通えるかを考えておくとよいでしょう。診療日時は通院先の案内で確かめてください。
間を空けずに続けるには、検診の日に次回の予約まで決めておくと、繁忙期と重なっても調整しやすくなります。検診で行う内容や費用は、予約時に確認しておくと事前に把握できます。
転居などで通院先が変わる前に保証の扱いを確認
転居や転勤で通院先が変わる場合は、元の契約先に次の2点を尋ねてください。治療を受けた医院以外でのメンテナンスが条件を満たすかどうか、満たすなら検診記録の提出が必要かどうか、です。
一方で、腫れや噛むと痛いといった症状がある場合は、保証についての返答を待つだけにせず、通える歯科医院にも早めに相談してください。保証の手続きと、お口の状態の確認は並行して進められます。
よくある質問
Q1. インプラントの定期検診に行かないとどうなりますか?
A. すぐに不具合が出るとは限りませんが、歯ぐきの炎症や清掃しにくい部分の変化に気づくのが遅れる可能性があります。定期的な管理を受けていない方では、インプラント周囲の病気が起こりやすい傾向が報告されています2。気づいた時点で検診を再開していただければ、現状を確認できます。
Q2. インプラントは10年持たないこともありますか?
A. どのくらい使えるかには個人差があり、一律の年数をお約束することはできません。歯周病の既往や清掃の状態、喫煙などがインプラント周囲炎に関わると報告されており1、セルフケアと定期的な点検の両方が関わってきます。
Q3. インプラント治療後の定期検診は、どのくらいの間隔で受ければよいですか?
A. 誰にでも当てはまる間隔はありません。治療歴やお口の状態に加え、保証書に定められた受診間隔も踏まえて、医院と相談して決めてください。
Q4. 京橋駅周辺の歯科医院で、検診だけ受けることはできますか?
A. 他院で治療したインプラントの検診に対応している歯科医院もあります。ただし、保証の条件として治療を受けた医院での受診が求められる場合があるため、受診前に元の医院へ扱いを確認しておくとよいでしょう。症状があるときは、確認を待たずに受診先にもご相談ください。
参考文献
1. Dreyer H, Grischke J, Tiede C, et al. Epidemiology and risk factors of peri-implantitis: A systematic review. Journal of periodontal research. 2018. PMID: 29882313 / DOI: 10.1111/jre.12562
2. Monje A, Aranda L, Diaz KT, et al. Impact of Maintenance Therapy for the Prevention of Peri-implant Diseases: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of dental research. 2016. PMID: 26701350 / DOI: 10.1177/0022034515622432
3. Lin CY, Chen Z, Pan WL, et al. The effect of supportive care in preventing peri-implant diseases and implant loss: A systematic review and meta-analysis. Clinical oral implants research. 2019. PMID: 31231883 / DOI: 10.1111/clr.13496
2015年 大阪歯科大学附属病院にて臨床研修終了
2016年 大阪歯科大学大学院 歯学研究科入学
2020年 大阪歯科大学大学院 歯学研究科卒業
歯科保存学専攻学位取得
2020年 大阪歯科大学附属病院にて勤務
2021年 大阪府一般歯科勤務 大阪府地域医療に尽力
2023年 京橋オレンジ歯科クリニック 院長就任
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本矯正歯科学会
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