
ブリッジの不具合をきっかけに、インプラントのその後を考える
長年使ったブリッジに不具合が出て、抜歯とインプラントの話を聞いた。その帰り道に「何年もつのだろう」と調べ始める方は少なくありません。一生もつとは言い切れませんが、長く使うために確かめておきたい点ははっきりしています。残存率の読み方、歯ぐきの出血との関係、部品ごとの修理の考え方を順にご説明いたします。
この記事の要点まとめ
- インプラントが使える期間は個人差があり、残存率は人工歯根が骨に残る割合を示すため、使用状態や被せ物の状態とは分けて考えます。
- 歯ぐきの出血や腫れ、膿、ぐらつきが続く場合は歯科医院に相談し、治療前後の歯周病検査と定期点検が大切です。
- 被せ物や部品の修理と人工歯根の処置では対応が異なり、費用や保証範囲も医院に確認し、清掃と定期通院を続けましょう。
インプラントは何年もつ?「残っている」と「使えている」は別

長く使う方はいても、一生使えるとは言い切れない
何年もつかは、お一人おひとりで異なります。長い期間使い続けられるかどうかは、骨や歯ぐきの状態、噛み合わせ、清掃の習慣なども踏まえ、歯科医師にご相談ください。
平均的な年数は、ご自身の交換予定日ではありません。
研究の残存率を読むときは、対象者と判定方法を確かめる
残存率は多くの場合、「人工歯根(インプラント体)が骨に残っている割合」を指します。周囲に炎症があっても、被せ物が欠けていても、骨に残っていれば数に含まれることがあります。
たとえばチタンとジルコニアの人工歯根を比べた研究でも、観察期間は12〜80か月の範囲でした1。数字を目にしたときは、どんな方が対象か、どのくらいの期間を追ったか、何をもって脱落としたかを確かめると、受け止め方がずれにくくなります。
人工歯根と被せ物では、修理・交換の考え方が違う
インプラントは、大きく分けて三つの部品でできています。
- 人工歯根(インプラント体):骨の中で全体を支える部分
- アバットメント:人工歯根と被せ物をつなぐ部品
- 上部構造:口の中に見える被せ物(人工歯)
被せ物の欠けやネジの緩みは、その部品だけで対応できる場合があります。一方、人工歯根のぐらつきや周囲の骨の変化は、検査を行ったうえで再治療を検討することになります。交換の時期は年数ではなく、そのときの状態で判断いたします。
長く使った後も、被せ物や周囲の骨は点検が必要
「骨に残っているから点検はいらない」とは言えません。被せ物のすり減り、噛み合わせの変化、周囲の炎症が気になる場合は、歯科医師にご相談ください。
ポイント
残存率は「骨に残っている割合」です。支障なく使えているかどうかは、定期的な点検で確かめていくことになります。
歯ぐきの出血が気になる方へ|長期使用を左右する変化

出血が続くなら、埋め込む前に歯周病の状態を確認する
歯磨きのたびに出る出血の原因は、診察をしなければわかりません。ただ、歯周病の既往がある方は、ない方に比べてインプラントを失う割合が高く、インプラント周囲炎なども起こりやすい傾向が報告されています2。
そのため、治療を決める前に歯ぐきの検査を受け、必要であれば歯周病の治療を先に進めるのが順序です。当院では、歯周病がインプラント周囲炎(インプラントの周りの骨が溶ける病気)の原因にもなると考え、治療前の歯ぐきの確認を大切にしております。
出血・腫れ・膿・ぐらつきが出たときの受診目安
治療後に次のような変化があれば、次回の検診を待たずに歯科医院へご連絡ください。
- 出血が数日続く、歯ぐきが腫れている
- 膿が出る、噛むと痛む
- 被せ物や人工歯根がぐらつく
強い腫れや発熱を伴うときは、早めの受診をおすすめいたします。受診までは反対側で噛むようにし、緩んだ部品をご自身で締め直したり、接着剤で留めたりしないでください。
歯磨きと定期点検に加え、歯ぎしりや喫煙も伝える
毎日の歯磨きで周囲を清潔に保つことが、長く使うための土台になります。定期検診では、清掃状態や炎症の有無に加え、噛み合わせや部品の緩みも確認いたします。
ご家族に指摘された歯ぎしり・食いしばり、喫煙、糖尿病の有無は、インプラントにかかる力や炎症の起こりやすさに関わります。遠慮なくお伝えください。通院の間隔は、歯周病の既往やセルフケアの状況を踏まえて、一人ひとりに合わせてご相談いたします2。
ポイント
出血の原因は診察で確かめるものです。治療前の歯周病の検査と、治療後の継続した点検の両方が、長く使うための支えになります。
ブリッジの不具合から考える、治療後の負担と相談先
噛むと痛いブリッジでも、支えの歯を残せるか確かめる
噛むと痛む原因や抜歯が必要かどうかは、診察なしには判断できません。支えになっている歯の根や神経、歯ぐきの状態を調べると、歯を残す治療やブリッジの作り直しが選択肢に入ることもあります。
歯周病の既往は、インプラント治療後の経過に関わります2。当院に限らず、残せる歯を見極め、必要以上に大がかりな治療が必要かを確かめることが大切です。
骨と残る歯を調べ、欠損範囲に合う治療を考える
歯科用CTで骨の量や形を確認したうえで、1〜2本の欠損であれば、その部分に限ったインプラントを検討するのが一般的な考え方です。ブリッジや入れ歯も含めて比べ、説明を聞いて納得してから決めることが大切です。
切開を抑えた手術方法を検討した研究もあります3。ただし、手術の方法がそのまま長期の経過を約束するわけではありません。 術後の痛みや腫れ、感染などのリスクもあります。
後から必要になる費用は、作業と対象部品に分けて聞く
将来かかる費用は、検査、部品の修理・交換、撤去、骨への処置、仮歯、新しい被せ物のうち、どこまで必要になるかで大きく変わります。インプラントは自由診療(公的医療保険が適用されない診療)のため、医院ごとに設定が異なります。
参考として、一般的な相場をご紹介します。インプラント1本あたりの総額(検査・手術・アバットメント・被せ物を含む)は、おおむね30万〜50万円程度とされています。骨が足りず、骨を補う処置(骨造成)が必要な場合は、さらに数万〜十数万円程度かかることがあります。治療期間や通院回数は骨の状態などによって異なるため、診察時に医師にご相談ください。治療後の定期点検は1回あたり数千円〜1万円程度、被せ物の作り直しは1本あたり10万〜20万円程度かかる例が見られます。
これらは一般的な相場であり、当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内いたします。保証の対象部位や定期受診の条件とあわせて、治療前に医院へご確認ください。
相談時に確認したい点を整理する
相談の際は、歯ぐき・噛み合わせ・骨をどう調べるか、治療後の点検はどのくらいの間隔かを質問してみてください。通院先を考えるときは、継続して通えるか、治療前の説明や術後の清掃・点検についても確認するとよいでしょう。
インプラントを長く使うには、日々の清掃と定期的な点検が大切です。最近の歯ぐきの出血や歯ぎしりの様子も含めて、まずは今のお口の状態を確かめるところから始めるとよいでしょう。
よくある質問
Q. インプラントは30年も使えますか?
A. 長い期間使い続けている方もいらっしゃいますが、何年使えるかを事前に約束することはできません。骨や歯ぐきの状態、噛み合わせ、日々の歯磨きと定期的な点検の継続によって経過は変わります。
Q. 10年後にはどのくらい費用がかかりますか?
A. 状態によって異なります。被せ物の修理だけで済む場合もあれば、人工歯根の撤去や骨への処置が必要になる場合もあります。どの作業が対象になるのか、保証の範囲とあわせて治療前に医院へご確認ください。
Q. 20年後のインプラントはどうなっているのでしょうか?
A. 人工歯根が骨に残っていても、被せ物のすり減りや噛み合わせの変化、周囲の炎症が起こっていることがあります。年数がたつほど、定期検診での点検が経過を見守る手がかりになります。
Q. 10年もたないこともありますか?
A. あります。歯周病の既往がある方では、インプラントを失う割合が高い傾向が報告されています2。歯ぎしりや喫煙、糖尿病の有無も含めて事前にお伝えいただき、治療計画と通院間隔を一緒に考えていくことをおすすめいたします。
参考文献
1. Padhye NM, Calciolari E, Zuercher AN, et al. Survival and success of zirconia compared with titanium implants: a systematic review and meta-analysis. Clinical oral investigations. 2023. PMID: 37740825 / DOI: 10.1007/s00784-023-05242-5
2. Annunziata M, Cecoro G, Guida A, et al. Effectiveness of Implant Therapy in Patients With and Without a History of Periodontitis: A Systematic Review With Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Journal of periodontal research. 2025. PMID: 39466662 / DOI: 10.1111/jre.13351
3. Romandini M, Ruales-Carrera E, Sadilina S, et al. Minimal invasiveness at dental implant placement: A systematic review with meta-analyses on flapless fully guided surgery. Periodontology 2000. 2023. PMID: 35906928 / DOI: 10.1111/prd.12440
2015年 大阪歯科大学附属病院にて臨床研修終了
2016年 大阪歯科大学大学院 歯学研究科入学
2020年 大阪歯科大学大学院 歯学研究科卒業
歯科保存学専攻学位取得
2020年 大阪歯科大学附属病院にて勤務
2021年 大阪府一般歯科勤務 大阪府地域医療に尽力
2023年 京橋オレンジ歯科クリニック 院長就任
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本矯正歯科学会
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