日々の生活の中で、お引越し・転勤などにより、お住まいを変えられる方も多いかと思います。お引越し・転勤で遠方に転居された場合は、歯科医院の転院が必要になることも。
歯科医院を転院するとき、注意していただきたいのが、インプラントです。
インプラントは複雑な構造をしており、それぞれの患者様に合わせて埋め入れられています。転院先のクリニックによっては、インプラントの適切なケア・処置を受けられない可能性も。
今回は、「インプラント治療中・治療後に転院する場合の注意点&確認しておくこと」について、ご説明します。
目次
■インプラント治療中に転院しなければならないときは?
◎極力、インプラント治療中(特に、手術後の仮歯の時期)の転院は控えていただきたいです
インプラント治療中、とは、主に、以下のような状況を指します。
- インプラント治療で精密検査を受け、歯科医師が治療計画を立案し、手術前の時期
- インプラント手術を受けた後の仮歯の時期(埋め入れたインプラント体と顎の骨が十分に結合していない状態)
上記2つのうち、①は転院しても、手術前のため、歯科医院間のやり取りは不要です。転居先の歯科医院で新たに、インプラントのカウンセリング~精密検査から始める形になります。
②は、極力、控えていただきたいです。と言うのも、まだ、インプラント体と顎の骨が十分に結合しておらず、歯科医院間のやり取りが非常に複雑になるおそれがあるためです。
やりとりが非常に複雑になるおそれがあるため、クリニックによっては、インプラント治療中の仮歯の時期の転院をお断りするところもあります。
とは言うものの、日本国外など、海外への転居では、インプラント治療中(仮歯の時期)の転院が必要になるケースも。
海外へ転居する場合は、可能であれば、定期的に日本に帰国し、同じ歯科医院でインプラント治療を継続するのが望ましいです。
どうしても、日本への帰国が難しい場合は、現在の歯科医師からカルテを渡してもらうことがおすすめです。カルテを受け取った後は、その国の歯科医師に向け、転居先の国の言葉に、カルテの内容を翻訳していただかなければならない場合があります。翻訳したカルテを、インプラント治療の継続に必要なデータとして、ご自身で転居先の国の歯科医師に渡すことで、引き継ぎが行われます(※1)(※2)。
(※1)オンラインでの引き継ぎを行うクリニックもあります。
(※2)クリニックによっては、海外の歯科医院との
引き継ぎに対応していないケースもあります。
◎インプラント治療後の転院は、治療中の転院(仮歯の時期)と比べて、歯科医院間のやり取りの難易度・複雑さは多少下がります
インプラント治療後の転院は、インプラント体と顎の骨が結合して安定している状態であれば、治療中の転院と比べて、歯科医院間のやり取りの難易度・複雑さは多少下がります(※)。
(※)患者様やお口の状態、クリニックにより、
引き継ぎの難易度・複雑さが異なります。
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次の項からは、「インプラント治療中・治療後の転院の流れ」、および、「インプラント治療中・治療後に転院する場合の注意点&確認しておくこと」をご説明します。
■インプラント治療中・治療後の転院の流れ
以下は、一般的な、インプラント治療中・治療後の転院の流れです。いずれも必須項目のため、下記をご参考にしていただいた上で、スムーズに転院を進めるようにしましょう。
①転院をすることを現在の歯科医師に伝える
現在、インプラント治療を受けている(or治療後の定期メンテナンスを受けている)歯科医院にて、歯科医師に、転院することを伝えましょう。
②現在の歯科医院から、転院先の歯科医院へのカルテ・データの引き継ぎを行う
転院を伝えた後は、現在、インプラント治療を受けている(or治療後の定期メンテナンスを受けている)歯科医院から、転院先の歯科医院へのカルテ・データの引き継ぎが行われます。
カルテ・データの引き継ぎ方法は、紙の書類で渡されることもあれば、オンラインでのやり取りなど、様々です。
引き継ぎをスムーズに進めるために、転院時には、以下のような、転院に必要な情報を双方の歯科医院に伝えましょう。
[転院時に、双方の歯科医院に伝える情報]
- 転院前・転院先の歯科医院の医院名や住所
- 電話番号
- メールアドレス
- インプラントの治療方式・術式
- インプラントパーツのメーカー
■インプラント治療中・治療後に転院する場合の注意点&確認しておくこと
インプラント治療中・治療後に転院する場合は、以下のような点に注意し、各項目を確認しておきましょう。
◎転院先の歯科医院がインプラント治療を行っている
転院に際しては、まずは、転院先の歯科医院がインプラント治療を行っていることが大前提になります。
インプラント治療を行っていない歯科医院に転院すると、インプラントの適切なケア・処置は受けられない可能性が高いです。
インプラント治療中・治療後に転院する場合は、歯科医院のHPを見て、そのクリニックがインプラント治療を行っているかどうかを確認しましょう。
◎インプラントの治療方式・術式が同じor似ている
インプラントには、以下のような、様々な治療方式・術式が存在します。
[インプラントにおける治療方式・術式の例]
手術の方式
- 1回法(1回で手術を終わらせる)
- 2回法(2回の手術を行う)
- 即時荷重(1回の手術で、インプラント体の埋め入れと仮歯の取り付けを同時に行う)
インプラントを用いる連結ブリッジ・総入れ歯
- フルアーチインプラント(オールオンフォー)
- インプラントオーバーデンチャー
インプラントパーツの素材
- チタンパーツ(主流)
- ジルコニアパーツ
上記のように、インプラントには様々な治療方式・術式が存在します。治療方式・術式が異なる場合、転院先のクリニックによっては、対応できないケースも。
インプラント治療中・治療後に転院する場合は、歯科医院のメール相談・無料相談などを利用し、インプラントの治療方式・術式を確認しておきましょう。
◎インプラントパーツのメーカー
インプラントは、以下の2つのインプラントパーツ+上部構造(人工歯)で構成されています(※)。
- インプラント体(顎の骨に埋め入れる人工歯根)
- アバットメント(人工歯根と人工歯を連結するパーツ)
(※)インプラント体とアバットメントが一体化した、
ワンピースタイプのインプラントパーツもあります。
インプラントパーツは、世界中の様々なインプラントメーカーによって作られています。転院先の歯科医院が違うメーカーのインプラントパーツだった場合、ケースによっては、インプラントの適切なケア・処置を行えない可能性も。
インプラント治療中・治療後に転院する場合は、歯科医院のメール相談・無料相談などを利用し、インプラントパーツのメーカーを確認しておきましょう。
◎治療費・メンテナンス費
インプラントは自由診療です。インプラントにかかる治療費・メンテナンス費は、歯科医院によって異なります。
転院前の歯科医院の治療費・メンテナンス費の感覚のまま転院した場合、転院先のクリニックによっては、費用の違いに驚くことも。
インプラント治療中・治療後に転院する場合は、歯科医院のメール相談・無料相談などを利用し、インプラントにかかる治療費・メンテナンス費を確認しておきましょう。
【スムーズに転院を進めるために、必要な情報を確認しておくことが重要です】
インプラント治療中・治療後の転院が必要な場合、当院では、患者さんのカルテ・データの引き継ぎを行っております。
インプラント治療中・治療後の転院をスムーズに進めやすいポイントとしては、「同じインプラントメーカーを使っている」が挙げられます。
特に、プレミアムインプラントと呼ばれる世界シェア上位のインプラントメーカーには、統一された規格・システムが存在します。統一された規格・システムにより、同じメーカを取り扱っている歯科医院に転院することで、スムーズにカルテ・データ移行を進めやすくなります。
インプラント治療中・治療後の転院に際しては、今回ご紹介した内容をご参照いただいた上で、必要な情報を確認しておきましょう。