歯科矯正には、「難症例」と呼ばれる、治療の難易度が高い歯並びが存在します。
中でも、特に難しいとされる難症例は「開咬(かいこう)」です。
今回は、「開咬の治療が難しい理由」および「開咬の治療方法の進化」についてお話しします。
目次
■開咬が難症例とされる理由
開咬とは、上下の前歯が閉じられず、奥歯に負担がかかっている歯並びの乱れです。オープンバイトとも呼びます。
開咬は歯科矯正の中でも特に難易度が高い歯並びの一つです。
理由①ワイヤー矯正単体やインビザライン以外のマウスピース矯正単体では開咬の治療が難しい
開咬の難易度が高いのは、上下の前歯を閉じられるよう、前歯を挺出すると共に、奥歯の負担を解消するために奥歯を圧下しなければならない点です。
・挺出(ていしゅつ)···· 舌側に歯をひっぱり出すこと
・圧下(あっか)·········· 歯ぐき側に歯を押し下げること
{ワイヤー矯正は歯を押し下げる動きが苦手}
ワイヤー矯正では、舌側に歯をひっぱり出す挺出は行えます。ただし、ワイヤー矯正は矯正装置の構造上、歯ぐき側に歯を押し下げる圧下が苦手です。
ワイヤー矯正では歯に接着したブラケットの中に金属製のワイヤーを通し、ワイヤーでギュッと歯を締めて歯並びを整えます。
「ブラケットの中に通したワイヤーで複数の歯をまとめて動かす」という矯正装置の構造により、ワイヤー矯正で歯ぐき側に歯を押し下げようとしても周りの歯に力がかかってしまい、対象の歯を上手く押し下げられないことがあります。
{マウスピース矯正は歯をひっぱり出す動きが苦手}
マウスピース矯正は歯ぐき側に歯を押し下げる圧下が得意です。
マウスピース矯正はマウスピースを歯にかぶせて歯を動かします。マウスピースをかぶせることでマウスピースの厚み分、自然と奥歯に圧力がかかり、歯ぐき側に奥歯が押し下げられます。
奥歯の圧下が得意なマウスピース矯正ですが、矯正装置の構造上、マウスピース矯正は舌側に歯をひっぱり出す挺出を苦手とします。マウスピースをかぶせて歯をひっぱり出そうとしてもマウスピースが“スポッ”と歯から外れてしまい、歯をつかんでひっぱり出すことができないのです。
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上記の理由から、マウスピース矯正のインビザライン(&独自技術のアタッチメント)が登場するまでは、開咬は治すのが難しい歯並びでした。現在でも、ワイヤー矯正やインビザライン以外のマウスピース矯正で補助処置を行わない場合、開咬は難症例とされています。
理由②開咬は後戻りしやすい
舌で前歯の裏側を押す、上下の前歯で舌先を噛む、など、開咬は患者様ご自身が行う「舌癖(ぜつへき)」によってひき起こされるケースが多いです。
子どもの頃からの舌癖は身についてしまっていることが多く、ご自身では癖の改善が難しいです。このため、矯正で歯並びを整えた後に舌癖によって負荷がかかり、歯が元の位置に戻ってしまうケースが少なくありません(歯の後戻り)。
舌癖が原因で後戻りしやすい点も、開咬の治療を難しくしています。
■インビザラインとアンカースクリューの登場により、開咬を改善するための効率的なアプローチが可能に
かつては難症例とされていた開咬。現在でも、補助処置を用いないワイヤー矯正単体・インビザライン以外のマウスピース矯正単体での治療において、開咬は難症例とされています。
難症例だった開咬ですが、マウスピース矯正のインビザライン(&独自技術のアタッチメント)、および、アンカースクリューの登場により、以前と比べて開咬は飛躍的に治しやすくなりました。
◎インビザラインの独自技術「アタッチメント」で歯の挺出と圧下を同時に行えるようになった
インビザラインが開発した代表的な独自技術の一つにアタッチメントがあります。
アタッチメントとは、白い樹脂製のポッチ(凸)を歯に接着し、ポッチに合わせて作られた窪み(凹)をマウスピースに作り、ポッチを窪みにはめて矯正力を高める補助装置です。
アタッチメントによってこれまでのマウスピース矯正では行えなかった歯の挺出ができるようになり、開咬が治しやすくなりました。
歯をひっぱり出す挺出用アタッチメントのほか、アタッチメントには歯の圧下をうながすタイプなど、さまざまなバリエーションがあります。インビザライン矯正ではアタッチメントを用い、歯の挺出と圧下を同時に行うことが可能です。アタッチメントに加え、そもそも、アタッチメントを用いなくても、マウスピース矯正には奥歯を圧下しやすい特性があります。
上記の理由から、アタッチメントを用いたインビザラインによるマウスピース矯正で、開咬の改善に効率的にアプローチできるようになりました。
◎アンカースクリューの登場で歯の圧下がしやすくなった
ワイヤー矯正は装置の構造上、歯ぐき側に歯を押し下げる圧下が苦手です。
これまで難しかったワイヤー矯正での歯の圧下ですが、顎の骨(歯槽骨)にネジを埋め込む補助処置「アンカースクリュー」が登場したことで、効率的に歯を押し下げられるようになりました。
アンカースクリューとは、歯を支えている歯槽骨に小さな金属製のネジを埋め入れ、ネジを支点にして歯を動かす補助処置です。
アンカースクリューの登場により、ワイヤー矯正単体では難しかった歯の圧下を効率的に行えるようになり、以前と比べ、ワイヤー矯正でも開咬を治しやすくなりました。
■口腔筋機能療法(MFT)で舌癖の改善を目指す
◎お口の筋肉トレーニングで矯正治療後の歯の後戻りを抑える
開咬は舌癖が原因でひき起こされるケースが多いです。舌癖が見られる場合は、矯正中、または、矯正後に口腔筋機能療法(MFT)を行うことで舌癖の改善にアプローチできます。
口腔筋機能療法とは、お口周りの筋肉トレーニングにより正しいお口の使い方を身につけ、舌の位置を正常化を目指す機能療法です。口腔筋機能療法を行い正しいお口の使い方を身につけると共に舌の位置を正常化することで歯にかかる過剰な負荷を抑えられ、矯正治療後の歯の後戻りを防ぎやすくなります
【歯科矯正が進化することで、より効率的・効果的に矯正を行えるようになります】
かつて、難症例だった開咬。2011年に登場したインビザラインのアタッチメント、そして、2013年頃に普及が始まった歯科用アンカースクリューにより、開咬を含めたさまざまな難症例が飛躍的に治しやすくなりました。
歯科矯正が進化することで、より効率的・効果的に矯正を行えるようになります。
当院では、これまでも、そして、これからも、矯正の治療方法の進化を期待して見守り、有用な技術・機器を積極的に導入してまいります。
-矯正治療の無料相談を受付中です-
大阪府八尾市の谷口歯科クリニック・京橋の京橋オレンジ歯科クリニックでは、矯正の専門医が歯科矯正を行います。
矯正治療に関する知識と技術を身につけた歯科医師により、難症例にも対応可能です。
矯正のクリニック選びや歯並びの乱れでお困りの方は当院までお気軽にご相談ください。相談費は無料です。
ご相談の際は現在のお悩みやご希望の矯正方法をじっくりとお伺いし、それぞれの方に適した治療をご提案させていただきます。カウンセリングのご予約はWEB、または、お電話にて受付中です。