「歯の矯正をしている人でゴムをかけているのを見たことがあるけど、あれって何？」

• マウスピース矯正（インビザラインなど）

• ブラケット矯正

など、歯科矯正では、「顎間ゴム（がっかんごむ）」という補助処置を行うことがあります。

今回は、歯の矯正で行うことがある補助処置「顎間ゴム」のご紹介です。

■顎間ゴムとは？

◎上下の歯の噛み合わせを安定させるための補助処置です

顎間ゴムとは、上下の矯正装置や、上下の歯に接着した器具にゴムをかける、歯の矯正の補助処置です。

以下のような目的のために、歯の矯正では、顎間ゴムを用いて補助処置を行うことがあります。

［顎間ゴムを用いる主な目的］

• 上下の歯の噛み合わせを正常な位置に近づける

• 噛み合わせを安定させる

顎間ゴムは、一般的には「ゴムかけ」、「エラスティック（エラスティックゴム）」と言う名称を用いる場合も。

◎どこにゴムをかけるの？

顎間ゴムでは、上下の顎間（上下の歯）をまたぐ形で以下のような箇所・器具にゴムをかけ、歯を動かす力（矯正力）を高めます。

［顎間ゴムをかける矯正装置の箇所・器具］

マウスピース矯正

• マウスピースに入れた切り込み部分

• 歯に直接、接着したボタン（フック）（レジン製or金属製）

ブラケット矯正

• ブラケットに取り付けたフック

■顎間ゴム　Q＆A

Q1.ゴムをかける時間は？

A1.食事・歯磨きを除き、ほぼ1日中（就寝中を含む）、顎間ゴムを装着していただきます

顎間ゴムの期間中は食事・歯磨きを除き、ほぼ1日中（就寝中を含む）、できるだけ長い時間、ゴムを装着することが大切です。

顎間ゴムの装着時間が不足すると、しっかり歯が動かず、矯正の治療効果が薄れるおそれがあります。

Q2. 顎間ゴムにはどんな効果があるの？

A2.上下の歯の噛み合わせの正常化をはじめとして、様々な目的・役割があります

歯の矯正では、上下の歯の噛み合わせを正常に近づけ、噛み合わせを安定させるために顎間ゴムを用いる場合があります。

噛み合わせの正常化をはじめとして、顎間ゴムには以下のような目的・役割も。

［顎間ゴムの主な目的・役割］

• 上下の歯の噛み合わせを正常な位置に近づける

• 噛み合わせを安定させる

• 前歯を後方（奥）に動かし、前歯の前方への突き出しをひっこめる

• マウスピース、ブラケット装置のみでは難しい、上下の顎間にまたがる歯の動きを補助する

Q3.顎間ゴムはどんな種類・かけ方があるの？

A3.歯の動かし方により、様々な種類の顎間ゴム・ゴムのかけ方があります

歯の動かし方により、以下のような、様々な種類の顎間ゴム・ゴムのかけ方があります。

［顎間ゴムの主な種類］

• 太め＆硬めのゴム（歯を大きく動かしたい場合）

• 細め＆やわらかめのゴム（歯を少しだけ動かしたい場合）

［顎間ゴムの主なかけ方］

• 2級ゴム
  目的：上顎の前歯を後方に動かす、下顎の奥歯を前方に動かす
  
  主に、出っ歯（上顎前突）の矯正で用いることがある顎間ゴムのかけ方です。
  2級ゴムでは、上顎の犬歯（3番目の前歯）の付近～下顎の大臼歯（奥歯）の付近にゴムをかけます。

• 3級ゴム
  目的：下顎の前歯を後方に動かす、上顎の奥歯を前方に動かす
  
  主に、受け口（下顎前突、反対咬合）の矯正で用いることがある顎間ゴムのかけ方です。
  3級ゴムでは、下顎の犬歯（3番目の前歯）の付近～上顎の大臼歯（奥歯）の付近にゴムをかけます。

• 垂直ゴム
  目的：上下の歯を舌側にひっぱり出し、より深い位置に噛み合わせを誘導する
  
  主に、開咬（かいこう）（※）の矯正で用いることがある顎間ゴムのかけ方です。

（※）開咬…上下の前歯を閉じられない歯並びの乱れ。「オープンバイト」とも呼ばれる。

垂直ゴムでは、上下の顎の近い位置の歯にゴムをかけます。

垂直ゴムのバリエーションとしては、上下の歯に三角形にゴムをかける三角ゴム、台形にゴムをかける台形ゴムなども。

• 交叉ゴム（クロスゴム）
  目的：上下の歯の内側・外側（舌側・頬側）のずれを直す
  
  主に、交叉咬合（こうさこうごう）（※1）や鋏状咬合（はさみじょうこうごう）（※2）の矯正で用いることがある顎間ゴムのかけ方です。

（※1）交叉咬合…一部の歯で、上下の歯の噛み合わせが左右や内側外側で逆転している状態。「クロスバイト」とも呼ばれる。

（※2）鋏状咬合…奥歯の噛み合わせが、上下で大きく外側にずれてしまい、ほとんど噛み合っていない状態。「シザーズバイト」とも呼ばれる。

｛注記｝

上記の「ゴムのかけ方」には「2級」「3級」などの名前がついていますが、いずれもゴムのかけ方の分類です（ちょっと、紛らわしいですね）。

「2級」「3級」などの名前はゴムの太さ・硬さを分類するものではありません。「2級はこの太さ・硬さ」などの分類ではないことを、ご留意いただければ幸いです。

Q4.顎間ゴムをかける期間はいつから？いつまでゴムをかけるの？

A4.矯正治療の中盤～終盤の時期に顎間ゴムを用いるケースが多いです

患者様や症例によって異なりますが、顎間ゴムによる補助処置を行う場合、矯正治療の中盤～終盤の時期に顎間ゴムを用いるケースが多いです。

なお、歯並び・噛み合わせの状態によっては、矯正開始後数ヶ月以内の比較的早い時期に顎間ゴムを用いる場合も。

顎間ゴムを用いるタイミングは症例によって異なりますので、歯科医師にご確認ください。

Q5.顎間ゴムは自分で交換するの？

A5.患者様ご自身で、毎日、新しいゴムに交換していただきます

顎間ゴムの期間中は、患者様ご自身で、毎日、新しいゴムに交換していただきます。

毎日、新しいゴムに交換する理由は、ゴムの弾力をできるだけ維持し、歯に力（矯正力）をかけ続けるためです。

2日以上、同じゴムを使い続けるとゴムが伸び、矯正力が弱まるおそれがあります。顎間ゴムの期間中は、毎日、新しいゴムに交換しましょう。

なお、顎間ゴムが外れてしまったときは、ご自身で、新しいゴムに交換してください。

【ゴムかけのルールを守り、理想の歯並びを目指しましょう】

歯の矯正で行うことがある補助処置「顎間ゴム（ゴムかけ）」の概容、および、顎間ゴムでよくあるご質問をQ＆A形式でご紹介させていただきました。

顎間ゴムの期間中は、毎日患者様がご自身でゴムを交換する必要があります。また、顎間ゴムでは、食事・歯磨きの都度、ご自身でゴムを外す・再装着しなければなりません。

食事・歯磨きでゴムを外した後、めんどくさい・かけ忘れた、などの理由でゴムをかけている時間が不足すると、歯が効率的に動かないこともあります。（特に、お酒が入る食事でゴムのかけ忘れ（再装着忘れ）が多くあります）。

顎間ゴムを含め、歯の矯正中は何かとストレス・不安を感じる場面も多いかと思います。ストレス・不安を感じる場面も多いかと思いますが、矯正におけるルールは、患者様が思い描く「理想の歯並び」を得るために必要なものなのです。

矯正を成功に導くために、顎間ゴムではゴムかけのルールを守り、理想の歯並びを目指しましょう。